フィボナッチ数列って何?
フィボナッチ数列は、次のような数の並びです。
0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, …
きまりは一つだけです。
「前の2つの数を足して次の数を作る」
だから
1 + 1 = 2
1 + 2 = 3
2 + 3 = 5
3 + 5 = 8
というように増えていきます。
とても単純ですが、あとで出てくる「黄金比」と深い関係があります。
黄金比って何?
黄金比は、だいたい 1.618… と続く少し変わった数です。
1本の線を
全体 : 長い方 = 長い方 : 短い方
となるように分けたとき、その比が黄金比になります。
このときの比は数式で表すと
(1 + √5) ÷ 2 ≒ 1.618…
となります。
建物の形や絵の構図などで「バランスがいい」と言われるとき、この黄金比がよく話題になります。
フィボナッチ数列と黄金比のつながり
フィボナッチ数列の「となりどうしの数の比」を見てみます。
1 ÷ 1 = 1
2 ÷ 1 = 2
3 ÷ 2 = 1.5
5 ÷ 3 ≒ 1.67
8 ÷ 5 = 1.6
13 ÷ 8 ≒ 1.625
21 ÷ 13 ≒ 1.615
だんだん 1.618… に近づいていることが分かります。
これが黄金比です。
つまり
・フィボナッチ数列をずっと続けていくと
・となりどうしの数の比が、黄金比に近づいていく
という関係があります。
ここが「フィボナッチと黄金比はセットで語られる」理由の一つです。
植物に出てくるフィボナッチと黄金角
ヒマワリの種、松ぼっくり、パイナップルなどをよく見ると、らせん状の模様が見えます。
その右巻きと左巻きのらせんの本数を数えると
21本と34本
34本と55本
55本と89本
など、フィボナッチ数になっていることが多いです。
黄金角 137.5度
茎のてっぺんでは、新しい葉が少しずつ角度をずらして出てきます。
そのときの角度が、約 137.5度 になっている植物が多く、この角度を黄金角と呼びます。
この角度は
360度を黄金比で分けたときの小さい方の角度
です。
もし角度が 120度など「きれいな分数」だと、葉が何枚かおきに重なってしまい、下の葉が光を受けにくくなります。
黄金比は分数で表しにくい数なので
・毎回 137.5度ずつ回して葉をつけていくと
・同じ場所に重なりにくくなる
・その結果、葉が重ならず、光を効率よく受けられる
と考えられています。
ただし、どんな植物も必ず 137.5度というわけではなく、近い角度でも似たような効果が出ることもあります。
葉のならびはどうやって決まるのか
昔は「植物の遺伝子に黄金角が書いてある」と考える人もいました。
今の考え方では
・葉のもとになる部分が出ると
・その周りでは「ここにはもう次の葉を作りにくい」という状態になり
・いちばん離れた、いちばん空いている場所に新しい葉ができる
という仕組みで葉の位置が決まっていくと考えられています。
このように、簡単なルールをくり返すうちに、自然にフィボナッチや黄金角に近い並びができてしまう、というイメージです。
螺旋(らせん)の形と勘違い
フィボナッチと黄金比の話で、よく「黄金螺旋」「フィボナッチ螺旋」という言葉が出てきます。
・黄金螺旋
数学的にきれいな対数螺旋で、少し回るごとに半径が黄金比倍になる。
・フィボナッチ螺旋
フィボナッチ数の大きさの正方形を並べ、その中に円弧を描いたもの。
正確には黄金螺旋とは少し違うが、外側ではかなり似てくる。
また、オウムガイの殻は「黄金比の完璧な例」と言われがちですが、実際に測ってみると、黄金比とは違う比率になっていることが分かっています。
きれいな螺旋だからといって、必ず黄金比とは限らないということです。
建築や美術での「本当」と「こじつけ」
フィボナッチや黄金比は、建築や美術でもよく話題になります。
ただし、次の2つは分けて考える必要があります。
・作者が本当に意識して使った例
・あとから「これは黄金比だ」と言っているだけの例
例えば
・パルテノン神殿
実際の寸法を測ると、黄金比とはかなり違う比になっており、
黄金比を意図的に使ったとは言いにくいです。
・画家サルバドール・ダリ
宗教画などで、キャンバスの比や構図に黄金比を意識的に使ったことが分かっています。
・建築家ル・コルビュジエ
人の身長と黄金比、フィボナッチ数列を組み合わせた「モデュロール」という尺度を作り、
実際の建物の設計に使いました。
・Apple のロゴ
デザイナー本人は、フィボナッチの円や黄金比は使っていないと話しています。
よくある「フィボナッチ円で説明する図」は後からのこじつけです。
このように、「本当に使った」例と「後からそう言っているだけ」の例が混ざっているので、注意が必要です。
音楽の中のフィボナッチ
音楽でも、フィボナッチ数列や黄金比が使われることがあります。
・クラシックでは、曲の長さや盛り上がりの位置が黄金比に近い例があり、
作曲家がそれを意識していたかどうかが研究されています。
・ロックバンド Tool の曲「Lateralus」では
歌詞の音節数が 1, 1, 2, 3, 5, 8… とフィボナッチ数にそって並ぶように作られていたり、
拍子の並びにもフィボナッチ数が関係していたりします。
これはメンバー自身が認めている、はっきりした例です。
最後に
フィボナッチ数列と黄金比には
・数列の比が黄金比に近づくという数学的なつながり
・植物の葉や種の並びに見られる自然界でのあらわれ方
・建築や美術、音楽の中での意識的な利用や、後からのこじつけ
など、いろいろな顔があります。
どこまでが本当に数学や自然の結果で、どこからが人間の「そう見えたらおもしろい」という気持ちなのかを考えながら見ると、フィボナッチ数列と黄金比の世界は、さらに興味深く感じられます。

