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秋になるとなぜ葉っぱは色づくのか。紅葉のしくみ

秋になると、緑だった山や公園の木が、赤や黄色に変わります。きれいな景色ですが、これは「木が冬を生きのびるための大事な作業」の一部です。

先に、簡単な結論を書いておきます。

・紅葉は、木が葉っぱの栄養を回収して、冬にそなえるために起こる
・色が変わるのは、葉の中の色素の種類と量が変わるから
・赤くなるのは、強い光や寒さから葉を守るため、そして虫よけの意味もあるかもしれない

この3つをおさえておけば、紅葉のしくみの基本はつかめます。

もくじ

紅葉は「葉っぱの片づけ作戦」

落葉する木にとって、葉っぱは春から夏にかけて活躍する「光合成の工場」です。
でも、冬が近づくと、寒さや日照不足でうまく働けなくなります。

そこで木は、葉っぱをそのまま枯らして捨てるのではなく、

・葉の中の大事な栄養(特に窒素やリン)を回収する
・その後で、葉を落とす

という順番で、きちんと片づけをします。

この「計画的な老化」と「栄養の回収」の途中で、葉っぱの色が変わっていきます。
つまり、紅葉は「葉っぱの最期の仕事の見えるサイン」なのです。

なぜ紅葉する必要があるのか

紅葉には、主に次のような意味があると考えられています。

1 栄養を無駄にしないため

葉っぱの中には、春に新しい葉や芽を出すために使える大事な栄養がたくさん入っています。
特に、

・タンパク質の材料になる窒素
・DNAなどにも使われるリン

などは、土から手に入れるのが大変な貴重な資源です。

そこで木は、葉を落とす前に、

・タンパク質などを分解して小さな分子にする
・それを幹や根に運んで、次の春のために貯めておく

という作業を行います。

このとき、光合成工場である葉緑体を解体していくため、緑の色も消えていきます。
紅葉は、この「栄養の回収作業」が進んでいる証拠です。

2 葉っぱを光と寒さから守るため

秋は、気温が下がってくるのに、天気がよくて日ざしが強い日もあります。
寒くて酵素の動きがにぶっているのに、強い光をあびると、

・光合成で使いきれないエネルギーが余る
・活性酸素がたくさん生まれて、細胞やタンパク質が傷つく

という「光ストレス」が起きます。

もし葉っぱの中身が壊れると、せっかく回収しようとしていた栄養までダメになってしまいます。
そこで役に立つと考えられているのが、赤い色素アントシアニンです。

・有害になりやすい光を吸収し、葉の奥まで届く光を弱める
・活性酸素を消して、細胞を守る

この「日焼け止め」のような働きで、栄養回収の作業を最後まで進めやすくしている、というのが有力な考え方です。

3 虫への「来ないで」サインかもしれない

もう一つの考え方として、「赤い葉は虫に対するメッセージではないか」という説もあります。

・秋には、アブラムシなどが卵を産む木を探してやってくる
・木が赤く鮮やかになることで、「自分は元気で防御も強いぞ」とアピールしている
・虫はそういう木を避けて、もっと弱そうな木を選ぶ

というしくみがあるかもしれない、という考えです。

この説については、まだ議論が続いていますが、
「紅葉には、生理的な意味だけでなく、生き物どうしのかかわりという面もありそうだ」
ということは、覚えておいてよいでしょう。

色が変わるしくみ

では、実際に葉の中では何が起きているのでしょうか。
葉っぱの色は、主に3種類の色素のバランスで決まります。

・クロロフィル(緑)
・カロテノイド(黄色〜オレンジ)
・アントシアニン(赤〜紫)

これらの量が季節によって変わることで、見える色も変化します。

緑が消える

春から夏にかけては、クロロフィルがたくさんあるので、葉は緑色に見えます。
秋になると老化のスイッチが入って、クロロフィルが分解されていきます。

・クロロフィルからマグネシウムなどの大事な成分が回収される
・分解されて、無色で無害な物質になり、葉の中にしまわれる

こうして緑色が少しずつ消えていきます。

黄色が見えてくる

カロテノイドは、もともと葉っぱの中にある黄色やオレンジの色素です。
普段は、クロロフィルの緑にかくれて目立ちません。

しかし、

・クロロフィルが分解されて減る
・カロテノイドはゆっくりしか分解されない

という理由で、秋になると、黄色が表に出てきます。
イチョウなどの黄色い紅葉は、このカロテノイドが主役です。

赤い色は「新しく作られる色」

赤いアントシアニンは、黄色とちがって「ただ残っているだけの色」ではありません。
秋になってから、葉の中で新しく合成されます。

そのときに大事なのが、

・葉の中に糖がたくさんたまること
・光(特に日ざしの強い晴れの日)
・冷え込み

です。

秋になると、葉柄の根元に「離層」という部分ができ、葉から幹へ糖が運ばれにくくなります。
一方で、晴れた日には葉がまだ光合成をして糖を作り続けるので、葉の中は糖でいっぱいになります。

この「行き場のない糖」が、アントシアニンを作る材料になり、同時に「今こそ作れ」という合図にもなります。
そこに光と冷え込みの条件が重なると、一気に赤く色づいていきます。

天気と紅葉の関係

紅葉のきれいさは、その年の天気にも大きく左右されます。

・夏に、よく育つだけの雨と日ざしがあること
・秋に、晴れた日が多く、日中はそれなりに暖かいこと
・夜はよく冷えこみ、昼夜の温度差が大きいこと
・空気が乾燥しすぎず、葉がパリパリに枯れないこと

こうした条件がそろうと、

・葉が元気なまま老化を始められる
・糖がよくたまり、アントシアニンを作りやすい
・葉が茶色く枯れる前に、赤や黄色がよく出る

といった「理想的な紅葉」が起こりやすくなります。

まとめ

もう一度、整理しておきます。

・紅葉は、木が葉を落とす前に栄養を回収し、冬にそなえるための「老化プログラム」の一部である
・緑が消えるのは、光合成をやめ、葉緑体を解体して栄養を回収しているから
・黄色は、もともとあったカロテノイドが緑の下から現れた色
・赤は、糖を材料に新しく作られるアントシアニンの色で、光や寒さから葉を守るはたらきがあると考えられている
・その赤色が、虫に対する「来ないで」というサインになっている可能性もある
・気温、光、水分など、その年の天気によって、紅葉の時期や鮮やかさが大きく変わる

秋に色づいた山や街路樹を見るとき、「今この葉っぱの中で、どんな片づけ作業が進んでいるのかな」と想像してみると、紅葉がまた一段とおもしろく感じられるはずです。

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