賞味期限と消費期限って、そもそも何?
スーパーやコンビニに行くと、ほとんどの食品に日付が書いてあります。
「賞味期限」や「消費期限」というあれです。
実はあの日付は、
- おなかをこわさないようにするための目安
- おいしく食べられる期間の目安
という、とても大事な情報です。
しかも、なんとなく決めているのではなく、
- 法律のルール
- 実際に食品を保存して行う実験
- 細菌や成分の検査
- 味やにおいのチェック
などを組み合わせて、きちんとした根拠にもとづいて決められています。
誰が期限を決めているの?
「国が日付を決めている」と思うかもしれませんが、そうではありません。
期限を決めるのは、主に次の人たちです。
- 食品を作っているメーカー
- 海外から食品を輸入している会社
国(消費者庁など)は、「こういう考え方で決めてくださいね」というガイドラインを出すだけです。
メーカーや輸入業者は、
- 原材料の状態
- 工場での作り方
- 包装のしかた
- どんな温度で運ぶか、保管するか
などを一番よく知っています。
だから、その食品の期限を決める責任も、その人たちにあります。
消費期限と賞味期限の違い
期限表示には、大きく分けて2種類あります。
- 消費期限
- 賞味期限
この2つの意味の違いをしっかり覚えておくと、とても役に立ちます。
消費期限とは
消費期限は、「安全に食べられる期限」です。
- すぐ傷みやすい食品につく期限です
- 目安として、作ってからだいたい5日以内に劣化しやすいものが対象です
例
- お弁当
- お総菜
- 調理パン
- 生菓子
- 生肉、生魚、生麺 など
消費期限を過ぎると、見た目があまり変わらなくても
- 細菌が増えている可能性が高くなる
- 食中毒になる危険が高くなる
と言われています。
なので、消費期限を過ぎたものは、「食べない」が基本です。
賞味期限とは
賞味期限は、「おいしく食べられる期限」です。
- 比較的、傷みにくい食品につく期限です
例
- スナック菓子
- カップ麺・インスタント麺
- 缶詰
- 牛乳、ヨーグルトなどの乳製品
賞味期限を少し過ぎても、すぐに危険になるわけではありません。
ただし、
- 味や香りが落ちているかもしれない
- サクサク感がなくなっているかもしれない
ので、
- 見た目
- におい
- すこし口に入れて味
を自分で確かめてから判断することが大切です。
そもそも期限表示がいらない食品もある
中には、期限の表示がいらない食品もあります。
とても傷みにくいものがそれに当たります。
例
- 塩
- 砂糖
- アイスクリーム
- 氷
- チューインガム など
お酒も、アルコールが入っていて腐りにくいので、たいていは「賞味期限」ではなく「製造年月」だけが書いてあることが多いです。
期限はどうやって決めているの?
期限を決めるときは、実際の食品を使って「保存試験」という実験をします。
メーカーは、こんなことを考えながら条件を決めます。
- 冷蔵なら何度で保存するか(例えば10度)
- 常温なら何度にするか(例えば25〜30度)
- 何日ごと、何か月ごとに検査するか
- どの数値を「もう限界」とみなすか
そのうえで、
- 作った直後
- 数日後、数週間後、数か月後
と決めたタイミングでサンプルを取り出して、検査していきます。
こうして
「この食品は、何日(何か月)までは安全で、品質も大丈夫」
という「実力」が分かってきます。
これをここでは「実力値」と呼びます。
消費期限に大事な細菌の検査
消費期限を決めるときに特に大事なのが、細菌の検査です。
なぜかというと、
- 細菌は目では見えない
- でも、増えすぎると食中毒の原因になる
からです。
よく調べられるものは、例えば次のようなものです。
- 一般生菌数
食品にどれくらい細菌がいるかを表す数値です。
数値が多くなるほど、腐りやすく、においも出やすくなります。 - 大腸菌群や大腸菌
便による汚れや、不衛生な扱いがなかったかを見るための指標です。
加熱済みの食品では、基本的には「いない状態」が理想です。 - 黄色ブドウ球菌 など
人の手から移りやすい菌で、毒素を出すものもあるため、しっかり管理する必要があります。
時間がたつごとに菌の数を調べて、
- いつ基準を超えそうか
- どこまでなら安全と言えるか
を判断し、消費期限の元となるデータにします。
賞味期限に大事な化学的な変化
賞味期限の対象になる多くの食品では、「腐る」というよりも先に、こんな変化が起こります。
- 油が酸化して、いやなにおいがする
- 湿気を吸って、ベタベタしたり、サクサク感がなくなる
- ビタミンが減ってしまう
これを調べるために、いろいろな数値を測ります。
- 酸価
油がどれくらい劣化しているかを見る数値です。
数値が高くなるほど、油っぽいにおいや、胸やけの原因になります。 - 過酸化物価
油の酸化の進み具合を表す数値です。これも高くなるほど劣化が進んでいます。 - 水分量
煎餅やクッキーがしけるかどうかに関係します。 - ビタミンの残り具合
「ビタミン入り」などをうたっている食品では、期限の終わりまで、ちゃんとビタミンが残っているかを確かめます。
例えば即席麺では、酸価などに「ここまで」という決まりの数値があり、その数値に達する前を賞味期限とします。
人が実際に食べて決める官能評価
数値だけでは分からないこともあります。
そこで行うのが「官能評価」です。
官能評価では、訓練を受けた人たちが、実際に食品を見たり食べたりして評価します。
チェックするもの
- 見た目(色が変わっていないか、分離していないか)
- におい(変なにおいがないか)
- 味
- 食感
などです。
さらに、
- 作りたてを冷凍などで劣化させずに保存した「基準の試料」と比べる
- どのタイミングで「もうおいしくない」と感じる人が増えるかを調べる
ことで、「商品として出せるギリギリのライン」を決めています。
実力値から期限にするときの安全係数
保存試験や官能評価の結果から、
「この食品は10か月までは大丈夫そう」
という実力値が出たとします。
でも、賞味期限をそのまま「10か月後」とはしません。
なぜかというと、
- 運んでいるときに温度が少し高くなってしまうかもしれない
- 家での保管のしかたが、あまり良くないかもしれない
といった「現実のばらつき」があるからです。
そこで使うのが「安全係数」という考え方です。
安全係数の考え方
安全係数は、実力値にかける数字です。
よく使われるのは、だいたい0.6〜0.8くらいと言われています。
例えば、
- 実力値が10か月
- 安全係数が0.8
なら、
10か月 × 0.8 = 8か月
となり、「賞味期限は8か月後」に設定されます。
残りの2か月分は、
- 真夏の暑さ
- 家庭での保存ミス
などをカバーするための「余裕」としてとっておくわけです。
とても傷みやすい食品では、係数を小さくしてより安全側にします。
逆に、缶詰やレトルト食品のように、とても安定している食品は、係数を1に近づけることもあります。
輸入食品の期限はどうしている?
海外から入ってくる食品の期限は、少し事情が複雑です。
海外メーカーがつけた賞味期限を、そのまま日本語に訳して貼り直せばいい、というわけではありません。
なぜなら、
- 日本は湿気が多く、夏はとても暑い
- 流通のシステムが外国と違う
- 消費者の「おいしさ」や「見た目」に対する感覚も違う
といった理由があるからです。
そのため、輸入業者は、
- 海外メーカーからデータや資料を取り寄せる
- 日本のルールやガイドラインに合っているか確認する
- 場合によっては、日本であらためて保存試験をする
といった対応をします。
また、
- 科学的な根拠なしに、元の期限より長く書き換える
- いったん出荷して返品された商品の期限を延ばして、もう一度売る
といったことは、基本的に認められていません。
食品ロスと期限表示の見直し
今、世界中で「食品ロス」が問題になっています。
日本でも、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品がたくさんあります。
この原因の1つとして、期限表示の運用や商習慣も見直されています。
「3分の1ルール」の見直し
日本の食品業界には、昔から「3分の1ルール」と呼ばれる慣習がありました。
例えば、賞味期限まで9か月ある商品なら、
- 最初の3か月のあいだに小売店に納品しないとダメ
- それを過ぎると、まだ6か月残っていても納品できない
という、とても厳しいルールです。
このせいで、本当はまだ十分食べられるのに、メーカー側で返品・廃棄になってしまう食品が出ていました。
そこで最近は、
- 納品の期限を「半分まで」にゆるめる
など、無駄な廃棄を減らす動きが出てきています。
年月日から「年月」表示へ
賞味期限が3か月より長い食品では、
- 「2025年4月1日」のような年月日表示から
- 「2025年4月」のような年月だけの表示へ
切り替えることが勧められています。
この場合、「その月の末日まで」が賞味期限と考えます。
細かい日付にとらわれすぎず、急いで捨てないようにするねらいがあります。
私たちが知っておきたいポイント
ここまで見てきたように、期限表示は、
- 実験
- データ
- 法律
- そして安全のための余裕
などを組み合わせて決められています。
パッケージに書かれているたった一行の「202X.XX.XX」の裏には、たくさんの工夫と努力があります。
私たちが覚えておきたいのは、次のようなことです。
- 消費期限
過ぎたら食べないのが基本 - 賞味期限
おいしさの目安
過ぎてもすぐ危険ではないので、見た目やにおいで確認してから判断する - 家での保管も大事
高温多湿の場所を避けるなど、自分の家庭でできる工夫も必要 - すぐに捨てないで、五感でチェック
見る、においをかぐ、少しだけ味見してみる
期限表示の意味を正しく理解し、数字だけでなく、自分の感覚もうまく使うことができれば、
- 食品ロスを減らす
- でも安全もちゃんと守る
という、バランスのよい食生活につながっていきます。

