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乗り物酔いする人、しない人の違いって?

乗り物に乗ると気持ち悪くなる人もいれば、全然平気な人もいます。同じ車やバスに乗っているのに、この差はいったいどこから来るのでしょうか。

結論を先にまとめると、
・生まれつきの体質や遺伝
・耳の中の「バランスを感じるセンサー」の敏感さ
・自律神経やホルモンの違い
・乗り物との付き合い方や慣れぐあい
などが組み合わさって、「酔いやすい人」と「酔いにくい人」の違いになっています。

ここから、一つ一つをやさしく見ていきましょう。

もくじ

そもそも乗り物酔いってどういうもの?

乗り物酔いは、目や耳、筋肉や内臓からの情報が「食い違う」ことで起こると考えられています。

・目は「止まっている本やスマホ」を見ている
・でも耳の奥の前庭という器官は「車が揺れている」と感じている
・体も少し揺れている

このように、体のあちこちから来る情報がバラバラになると、脳が混乱してしまいます。
脳はそれを「危険かもしれない」と判断し、自律神経を大きく動かし、吐き気や冷や汗などを引き起こします。

つまり、乗り物酔いは「体が弱いから」ではなく、「体を守る仕組みが過敏に働いた結果」と考えられています。

酔いやすい人と酔いにくい人の大きな違い

生まれつきの体質や遺伝の影響

研究から、乗り物酔いになりやすさの半分以上は「生まれつきの体質」によると言われています。
双子を調べた研究では、家族の中で酔いやすい人がいると、同じように酔いやすい人が出やすいことが分かっています。

例えば、こんな遺伝的な違いが関係していると考えられています。

・内耳(前庭)の形や大きさ、感度のわずかな違い
・平衡感覚の神経の働き方の違い
・血糖値やエネルギーの使い方の違い
・ストレスホルモンの出方の違い

こうした小さな差が積み重なり、「少しの揺れでも反応しやすい人」と「かなり揺れても平気な人」の差になっていきます。

バランスのセンサーがどれくらい敏感か

耳の奥には、ぐるぐる回転を感じる半規管と、上下左右の加速や重力を感じる耳石器があります。
この「バランスセンサー」が敏感な人ほど、動きの変化を細かく感じ取ります。

・敏感な人
 少しの揺れや加速の変化にも強く反応する
 → 情報の食い違いが起きやすく、酔いやすい

・あまり敏感でない人
 揺れを感じにくい
 → 同じ環境でも、脳があまり混乱しないので酔いにくい

また、前庭からの信号をどのくらい長く「引きずるか」も人によって違います。
回転が止まった後も「まだ回っている感じ」が長く残る人は、その分だけ脳の負担が大きくなり、酔いやすくなると考えられています。

自律神経やホルモンの反応の違い

乗り物酔いが始まると、自律神経とホルモンが大きく揺れ動きます。ここでも個人差が出ます。

・すぐに冷や汗が出やすい人
・胃がすぐにムカムカしやすい人
・血圧が下がりやすい人

こういう人は、同じ揺れに対して症状が強く出やすくなります。

さらに、ホルモンの影響で「酔いやすい時期」が変わることもあります。

・女性は男性より酔いやすい傾向がある
・月経中や妊娠中など、ホルモンの変化が大きい時期に酔いやすくなる人がいる
・片頭痛を持っている人は、乗り物酔いもしやすいことがある

つまり、自律神経やホルモンが敏感な人ほど、酔いの症状も出やすいと考えられます。

耳や脳だけじゃない 体の動かし方や姿勢のクセ

姿勢を保つのが得意な人・苦手な人

人はじっと立っているつもりでも、実は少しずつ揺れながらバランスを取っています。
この「姿勢を保つ能力」も、人によって差があります。

・元々姿勢が安定している人
 知らない環境でも、うまく体を使ってバランスを取れる
 → 酔いにくい

・姿勢が不安定になりやすい人
 足や体が大きく揺れやすい
 → 体の揺れ自体がつらくなり、酔いにつながりやすい

実験では、本人が「気持ち悪くなってきた」と感じる前から、体の揺れ方に変化が出ていることも確認されています。

どんな乗り方をしているか

同じ人でも、「どうやって乗り物に乗るか」で酔いやすさが変わります。

酔いやすい乗り方の例
・スマホや本を長時間見続ける
・進行方向と逆を向いて座る
・体をだらっと預けすぎて、揺れに合わせて踏ん張らない
・窓がない場所で外が見えない

酔いにくい乗り方の例
・できるだけ進行方向を向いて座る
・遠くの景色や地平線を見る
・体を少しだけ踏ん張って、自分で姿勢を整えようとする
・窓のある席を選ぶ

このように、姿勢や視線の向き、体の使い方によっても「酔いやすさ」は大きく変わってきます。

経験と「慣れ」も大きなポイント

最初は酔いやすかったのに、何度も同じ乗り物に乗るうちに平気になっていく人もたくさんいます。
これは、脳が新しい揺れや動きに「慣れて」いくからです。

・最初は感覚のズレが大きく、脳が混乱しやすい
・何度も経験するうちに、「このパターンの揺れは安全だ」と学習する
・予測がうまくできるようになり、酔いにくくなる

逆に、普段あまり乗らない乗り物(船、ジェットコースター、VRなど)にいきなり長時間乗ると、慣れていないので酔いやすくなります。

そのときの体調や気分も関係する

同じ人でも、日によって酔いやすい日と酔いにくい日があります。例えば

・寝不足や疲れがたまっている
・空腹すぎる、または食べ過ぎている
・ストレスや緊張で、もともと自律神経が乱れている
・少し頭痛や気分の悪さがある状態で乗り物に乗る

こういうときは、普段よりも乗り物酔いが起こりやすくなります。

また、「酔ったらどうしよう」と不安が強いと、体が先に緊張してしまい、かえって酔いやすくなることもあります。
逆に、少し余裕を持って「ダメそうなら途中で休憩しよう」と考えるだけでも、体がリラックスしやすくなり、症状が軽くなることもあります。

酔いやすい人ができる工夫

最後に、酔いやすい体質の人でも、少しでも楽に過ごすための基本的な工夫をまとめておきます。

・前の日はしっかり寝ておく
・乗る前に軽く食べておき、空腹や食べ過ぎを避ける
・できるだけ進行方向を向いて座る
・窓側の席を選び、遠くの景色を見る
・本やスマホは長時間見続けない
・深く静かな腹式呼吸を続けて、体の緊張をゆるめる
・どうしてもつらい場合は、医師や薬剤師に相談して薬を使う

酔いやすいかどうかは、その人のせいでも性格のせいでもありません。
生まれつきの体質や体の仕組み、ホルモン、姿勢のクセ、生活習慣など、さまざまな要素が重なった結果です。

自分の体の特徴を知り、「少しでも楽になる乗り方」を探していくことで、乗り物との付き合い方は必ず変えていくことができます。

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