「無洗米って、本当に洗わなくていいの?」
そう思ったことはありませんか。
無洗米は、ただ「ラクなお米」ではなく、水を汚しにくく、栄養も守れるように工夫された、かなりハイテクなお米です。
- なぜ無洗米は洗わなくていいのか
- ふつうの白米と何が違うのか
- 体や環境にどんなメリットがあるのか
- おいしく炊くコツ
をまとめていきます。
お米の構造と「肌ヌカ」の話
まずは、お米そのものの構造から。
白いご飯になる前のお米は「玄米」と呼ばれます。玄米は、外側から
- 皮
- ヌカ(糊粉層)
- その内側の胚乳(ここがほとんどデンプン、白い部分)
という何層もの構造になっています。
ふつうの白米にするときは、玄米の外側の皮やヌカを削り取りますが、どうしても最後に少しだけ残ってしまう部分があります。これが
「肌ヌカ」
と呼ばれる、とてもベタベタした薄いヌカの層です。
肌ヌカには
- 脂質(油)
- たんぱく質
などが多く、ベタベタしてお米の表面にくっついています。これが残っていると
- 炊くときに水をはじいて吸水しにくい
- 加熱中に酸化して「ヌカ臭さ」の原因になる
といった問題が起きます。
昔からやってきた「お米を研ぐ」という作業は、この肌ヌカを水と摩擦の力でこすり落とすためのものなのです。
無洗米とふつうのお米、どこがそんなに違うの?
電子顕微鏡で、お米の表面を何百倍にも拡大して見ると
- ふつうの白米
→ 表面にまだらに肌ヌカが残っている - 無洗米
→ 肌ヌカがきれいに取れていて、細胞壁がきれいに見える
という違いがあります。
つまり無洗米は、工場の時点で、家庭での「研ぐ作業」をすませてあるお米と考えることができます。
だから
- これ以上ゴシゴシ洗う必要がない
- 水を入れたらすぐに吸水を始められる
というわけです。
無洗米はどうやって作られているの?
無洗米と一口に言っても、実は作り方はいくつかあります。代表的なのは次の3つです。
BG精米製法(ヌカ式)
日本で一番よく使われている方法です。
ポイントは「ヌカは米よりヌカ同士でくっつきやすい」という性質を利用していること。
- 精米機の中でお米をかき混ぜる
- すでにはがれたヌカが、まだ表面に残っている肌ヌカにくっつく
- それごと取り除く
という仕組みです。水も薬品も使わず、乾式で行われるのが特徴です。
メリット
- 水を使わないので排水ゼロ
- ヌカは捨てずに、肥料や家畜のエサとして再利用できる
環境にもやさしい方法です。
タピオカ式(NTWP)
こちらは、タピオカでんぷんを使う方法です。
- 少しの水とタピオカでんぷんを米と一緒に混ぜる
- タピオカが肌ヌカだけを選んでくっつけてくれる
- タピオカを取り除くと、肌ヌカも一緒に取れる
という仕組みです。お米に対する衝撃が少ないので、粒の形をきれいに保ちやすいとされています。
水洗い・乾燥式
これは、家庭の「洗米」を工場で大規模にやるイメージです。
- 強い水流でお米を洗う
- そのあと一気に乾燥させる
という方法ですが、大量の水とエネルギーが必要になり、排水処理も大変なので、あまり主流ではありません。
無洗米なのに水が白く濁るのはなぜ?
「無洗米なのに、水を入れると白くにごる。やっぱり汚れているんじゃないの?」
と不安になる人も多いところです。
でも、この白いにごりの正体は
ヌカではなく、デンプンです。
無洗米は、肌ヌカが取れている分、デンプンの細胞が表面まで出ています。そこに水が触れると
- 表面のごく細かいデンプンが水に溶け出す
- 水の中にデンプンの粒が浮かんだ「白いスープ」のような状態になる
この「白いスープ」がにごりの正体です。
デンプンは、そもそもお米の主成分なので
- 汚れではない
- 衛生面の問題もない
- 味を悪くするわけでもない
つまり、神経質に洗い流す必要はありません。
無洗米をゴシゴシ洗うと逆効果
無洗米をふつうのお米のように何回もこすり洗いしてしまうと、むしろマイナスになります。
- 表面のデンプンが削れ過ぎる
- 米粒の外側が傷つく
- 炊いたときにベチャベチャ、またはボソボソしやすくなる
- 水溶性ビタミンやミネラルが水に流れ出てしまう
多くのメーカーは
- 研がない
- どうしても気になるなら、軽くすすぐ程度
をおすすめしています。
「しっかり洗った方がきれいで安心」というイメージとは、考え方が逆なんですね。
「濁度28ppm」って何の数字?
無洗米には「濁度」という品質基準があります。
濁度というのは、水のにごり具合を数字にしたものです。全国無洗米協会では
「無洗米の濁度は28ppm以下」
という決まりを作っています。
これは
- 手で4〜5回ていねいに研いだお米の清潔さと同じくらい
- ヌカの汚れはほとんどなく、どうしても出てしまうデンプンだけが水に溶けている状態
を目安にした数字です。
つまり、この基準をクリアしている無洗米は
「しっかり研いだお米と同じレベルで清潔」
と考えてよい、ということになります。
無洗米は栄養面でもおトク
無洗米の大きなメリットのひとつが、栄養の流出を防げることです。
ビタミンB1やナイアシンが多く残る
お米には
- ビタミンB1
- ナイアシン(ビタミンB3)
といった水溶性ビタミンが含まれています。ところが「水に溶けやすい」ため、ふつうの白米は
- 研ぐとき
- その後のすすぎのとき
に、これらがどんどん水に流れ出てしまいます。
無洗米は、そもそも研がないので、この流出が起こりにくく
- ふつうの白米を洗った後と比べて、ビタミンB1やナイアシンが約1.8〜2倍ほど多く残る
といったデータもあります。
サプリを飲まなくても、主食から自然にビタミンを取りやすいのはうれしいポイントです。
「亜糊粉層」とおいしさの関係
胚乳の一番外側に「亜糊粉層(あこふんそう)」と呼ばれる層があります。
ここには
- オリゴ糖
- アミノ酸
など、うまみにつながる成分が多く含まれています。
昔ながらの精米や、強い洗米では、この亜糊粉層まで削り取ってしまうことが多かったのですが、BG精米のような技術では
- いらない肌ヌカだけを取り除く
- 亜糊粉層はできるだけ残す
という細かい調整ができるようになっています。
その結果
- うまみの多い部分を残したまま
- ヌカの嫌なにおいだけを減らせる
おいしさと機能性を両立したお米になっているのです。
カロリーや栄養バランスは変わるの?
炭水化物(デンプン)やたんぱく質、脂質といった「三大栄養素」の量は
- 無洗米も
- ふつうの白米も
ほとんど同じです。
ただし、同じ「1カップ」で比べると
- 無洗米は表面がなめらか
- 粒同士のすき間が少なく、ぎゅっと詰まる
ため、無洗米の方が「中身の実の部分」が少し多く入ります。
ボリューム的にお得、と考えることもできますが、食べ過ぎには注意したいところです。
無洗米は環境にもやさしい
無洗米が開発された背景には、日本の水質汚濁問題があります。
お米のとぎ汁には
- 窒素
- リン
といった栄養塩がたくさん含まれていて、これが川や海に流れると
- 植物プランクトンが増えすぎる
- 赤潮などが起きて、水の中の酸素が減る
といった「富栄養化」という環境問題の原因になります。
無洗米を使えば
- 家庭から出るとぎ汁そのものが出ない
- ヌカは工場に集約され、肥料などとして再利用される
という形になり、「分散して汚す」から「一か所で管理して活用する」への転換が起こります。
特に、水を使わないBG精米のような方法では
- 工場でも排水がほとんど出ない
ため、ライフサイクル全体で見ても環境負荷が小さいと言えます。
無洗米って高いけど、実は損ではない?
店頭で見ると、無洗米はふつうの白米より少し高いことが多いです。
値段が高くなる理由
- 肌ヌカをしっかり取る分、重さが減る(歩留まりが下がる)
- 特別な設備や技術が必要
などがあります。
しかし、よく考えると
- ふつうの白米5kgには、後で洗って捨ててしまう肌ヌカも含まれている
- 無洗米5kgは、ほぼ全部がそのまま食べる部分
という違いがあります。
さらに
- 洗米に使う水道代
- 下水道料金
- 洗う時間や手間(人件費と考えればかなりのコスト)
を考えると、「思ったほど高くない」「場合によってはむしろ合理的」という見方もできます。
特に
- 給食センター
- 飲食店
- 忙しい共働き家庭
など、大量にご飯を炊いたり、時間を節約したい場面ではメリットが大きくなります。
無洗米をおいしく炊くコツ
無洗米は、表面の構造や詰まり方がふつうの白米と少し違うため、炊き方にもコツがあります。
水の量を少し多めに
無洗米は、同じカップ1杯でも実の部分が多いぶん、必要な水の量も少し増えます。
- 炊飯器に無洗米専用の目盛りがある場合
→ それに合わせる - 計量カップを使う場合
→ ふつうの白米より「大さじ1~2杯」ほど水を足す
を目安にしてみてください。
浸水時間はしっかりとる
「洗わない=すぐ炊ける」ではありません。
デンプンを芯までやわらかくするには、きちんと水を吸わせる時間が必要です。
目安
- 夏場なら30分程度
- 冬場なら1時間程度
浸水させてから炊くと、ふっくらしたご飯になりやすいです。
最近の炊飯器には
- 無洗米モード
がついているものも多く、このモードでは
- 温度の上げ方
- 予熱時間
などが無洗米に合わせて細かく調整されています。対応機種なら、無洗米モードを使うのが一番かんたんです。
まとめ 無洗米は「手抜き」ではなく「よく考えられたお米」
最後に、「無洗米はなぜ洗わなくていいのか」をあらためて整理してみましょう。
- 工場で肌ヌカをしっかり除去しているから
→ もともと家庭で研ぐ必要がない状態まで仕上げてある - 水が白く濁る原因はデンプンだから
→ 汚れではなく、お米そのものの成分。洗いすぎるとかえって食感や栄養が悪くなる - 栄養が守られるから
→ ビタミンB1やナイアシンなど、水溶性ビタミンが流れ出にくく、ふつうの白米より多く残る - 水環境を守る仕組みになっているから
→ とぎ汁が出ないことで、川や海を汚しにくく、ヌカもリサイクルできる
無洗米は「ズボラ用のお米」ではなく
- 科学
- 栄養
- 環境
の面からしっかり考えて作られた、実はとても賢いお米です。
もし家で無洗米を使うことがあったら
- あまりゴシゴシ洗わない
- 水は少し多め
- 浸水時間はきちんととる
この3つを意識して、無洗米の実力を引き出してあげてください。

