街を歩くと必ず見かける赤いポスト。
当たり前のように立っていますが、「なぜ赤いのか」「なぜあの形なのか」には、長い歴史と工夫がつまっています。ここでは、日本のポストが黒い木箱から始まり、赤い丸型を経て、今の四角い形に進化していった流れを分かりやすくまとめます。
最初のポストは黒くて四角い木の箱
日本で郵便制度が始まった明治の初め、最初に設置されたポストは「黒塗柱箱」と呼ばれる四角い木製の箱でした。
・杉の板でできている
・高さは約123センチ
・色は黒
・四角い柱のような形
ところがこの黒いポストには、大きな問題がありました。
夜の街がまだ暗かったため、黒色が背景にまぎれてしまい、どこにあるのか全く見えなくなってしまったのです。手紙を出す人も、集配する人も場所が分かりにくく、郵便サービスとしては不便だらけでした。
さらに「トイレと間違えられた」という有名な噂まで広がるほど、ポストらしさが欠けていました。見た目の存在感の弱さが、こうした混乱の原因になったとも言えます。
鉄と赤色の登場でポストが一気に変わる
明治30年代になると鉄を加工する技術が発展し、木製では限界だったポストを改良する動きが本格化します。
そして1901年、ついに現在の基本スタイルにつながる新しいポストが生まれました。
・材質が鉄に変わる
・形が円筒形に変わる
・色が黒から赤に変わる
この三つの変化が、ポストの歴史を大きく変えました。
なぜ赤が選ばれたのか
赤は、暗い場所でも遠くからでも見つけやすい色です。
夕方の薄暗い時間や雨の日でも、目に入りやすい性質があります。
また、背景色が多い街の中で赤は強く目立ちます。
・木や草の緑
・空の青
・建物の灰色や茶色
こうした中で赤は特に目立ち、ポストの位置がひと目で分かるようになります。
さらに「重要」「注意」といった意味を持つ色でもあり、手紙を預かる場所として信頼を示すのにぴったりでした。
なぜ丸い形になったのか
円筒形になった理由の一つは、通行のじゃまにならないためです。
人力車や自転車が増えてきた時代、道の隅に四角い箱があると角にぶつかりやすく危険でした。
丸い形なら角がないので衝撃を受けにくく、ぶつかっても危険が少なくなります。
流れるように通行できるよう工夫された形だったのです。
さらに当時の日本の郵便制度はイギリスを参考にしており、イギリスで広く使われていた赤い円筒形のポスト(ピラーボックス)が手本になったとも言われています。
赤い丸型ポストの完成とその後の変化
1908年には、投入口がくるっと回せる「回転式ポスト」が正式に採用され、赤い円筒形のスタイルが全国に広がりました。
ここで「赤い丸型ポスト」はほぼ完成形となり、長く日本の郵便を支える基本デザインになります。
しかし第二次世界大戦中は鉄が不足し、コンクリート製ポストなどの代用品が登場します。
それでも通信を止めないため、苦しい状況の中で作られたポストたちでした。
速達専用だった青いポスト
戦後、日本の経済が発展すると、仕事のスピードが上がり、郵便にも「急いで届けてほしい」というニーズが強くなりました。
そこで1959年ごろから、速達専用の青いポストが都市部に設置されはじめます。
青は空やスピードを連想させ、特別なサービスの色として選ばれたと言われています。
ただし現在では、多くのポストが投入口を二つに分けて速達にも対応できるようになったため、青ポストは数を減らしてレアな存在になっています。
どうして今のポストは四角いのか
今もっともよく見るポストは、赤い四角い箱型です。
これは、郵便物の量の増加や作業の効率化に対応するために生まれた進化形です。
四角い方がいい理由
・たくさんの郵便物をまっすぐ重ねて入れやすい
・大きめの郵便物にも対応しやすい
・投入口を二つに分けるなど、機能を増やしやすい
・集配作業でケースの出し入れがしやすい
こうした理由から、現在は四角いポストが主役になっています。
丸型は少なくなりましたが、観光地などではレトロな魅力として残されています。
観光スポット化したカラフルなポストたち
21世紀に入ると、赤だけでなく地域の特色を生かした「ご当地ポスト」も増えてきました。
・黄色いポスト
幸福をイメージした色。奈良や宮崎などに設置。
・白いポスト
灯台や海辺の風景に合わせた特別仕様。
・海辺の青いポスト
景色に溶け込むための青で、速達用とは別の存在。
・ピンクのポスト
桜の名所や恋人の聖地で人気。
ポストは、単に手紙を出す場所だけでなく、写真に撮りたい「まちのシンボル」としても活用されるようになっています。
結論 赤いポストは信頼のしるし
日本のポストの歴史をふり返ると、たくさんの工夫が積み重なって今の姿になっていることが分かります。
・黒い木製ポストは、見つけにくくて失敗
・赤い円筒形の鉄製ポストは、見つけやすくて丈夫
・丸型は時代を代表するデザインとして広まった
・その後、郵便物が増えたため四角いポストが主役に
・現代ではカラフルなご当地ポストも登場している
色や形は変わりながらも、赤いポストは今も「郵便が確実に届く」という安心の象徴として街に立ち続けています。
デジタル時代になった今でも、その存在はどこか温かく、手紙を送りたくなる気持ちを思い出させてくれます。

