コンビニやスーパーでよく見る「ソーセージ」と「ウインナー」。
実はこういう関係になっています。
- ソーセージは「大きなグループ」の名前
- ウインナーは、その中の「細くて羊の腸を使ったタイプ」の名前
ここからは、もう少し詳しく見ていきます。
ソーセージとウインナーの基本的な関係
まずいちばん大事なポイントは、「ウインナーはソーセージの一種」ということです。
・ソーセージ
肉を細かくして味つけをし、腸などの袋に詰めて加熱した食品全体を指す言葉
・ウインナー
ソーセージのうち、「細くて、もともとは羊の腸を使うタイプ」のこと
なので、「ソーセージとウインナー、どっちが正しい言い方?」という質問には、
「どっちも正しいけれど、ウインナーはソーセージの中の一つだよ」と答えるのが正解になります。
JASが決めている「正式な分け方」
日本では、ソーセージの種類はメーカーが好き勝手につけているわけではありません。
農林水産省が決めた「JAS規格」というルールに基づいて名前をつけています。
このJASでは、ソーセージの種類を主に次の二つで決めています。
- 何の腸、どんな袋に詰めているか
- できあがったときの太さ(直径)
ざっくり表にすると次のようになります。
- ウインナーソーセージ
- 羊の腸を使用、または太さが20mm未満
- かんだときに「パリッ」とした食感
- フランクフルトソーセージ
- 豚の腸を使用、または太さが20mm以上36mm未満
- 肉の存在感が強く、ジューシー
- ボロニアソーセージ
- 牛の腸を使用、または太さが36mm以上
- 大きなソーセージで、薄くスライスして食べることが多い
「何の肉を使っているか」や「どんな味つけか」も大事ですが、
JASで名前を分けるときにいちばん効いてくるのは、この「太さ」と「腸・袋の種類」です。
ウインナーが特別な理由
「ウインナー」と名のるためには、次のような条件があります。
・もともと羊の腸を使うことが原則
・人工のケーシング(コラーゲンやセルロースなど)を使う場合は、太さが20mm未満
羊の腸はとても薄くてやわらかいので、加熱すると中の肉が膨らみ、
かんだ瞬間にパンと破れて「パリッ」とした食感になります。
この食感こそ、多くの人がイメージする“ウインナーらしさ”です。
今は人工のケーシングもよく使われますが、
太さを20mm未満にしているのは「本来の羊腸のサイズ感」を再現するためでもあります。
フランクフルトとボロニアの違い
同じルールは、他のソーセージにも当てはまります。
・フランクフルトソーセージ
豚の腸、または20mm以上36mm未満
皮がやや厚く、焼いても破れにくく、バーベキューなどに向いている
・ボロニアソーセージ
牛の腸、または36mm以上
とても太く、かぶりつくというより、ハムのように薄く切ってサンドイッチなどに使うことが多い
同じソーセージでも、太さが変わると、合う料理シーンまで変わってくるのが分かります。
名前の由来はヨーロッパの都市
ソーセージの名前には、ヨーロッパの地名がたくさん出てきます。
・ウインナー
ドイツ語で「ウィーン風」という意味
もともとは、ウィーンで人気になったスタイルのソーセージ
・フランクフルト
「フランクフルト風」という意味
ドイツのフランクフルトで発達したソーセージが元
・ボロニア
イタリアのボローニャという町が由来
本場では「モルタデッラ」と呼ばれる、大きくて断面が美しいソーセージが有名
ただし、日本の「ボロニアソーセージ」はアメリカ経由で広まった概念も混ざっていて、
イタリアの本物のモルタデッラとは必ずしも完全には同じではありません。
「太くてスライスして食べるタイプのソーセージ」という点で、ざっくり似た仲間だと考えると分かりやすいです。
日本にソーセージが広まった意外なきっかけ
日本で本格的なソーセージ作りが広まるきっかけとなったのは、
第一次世界大戦のときに日本に連れてこられた「ドイツ人捕虜」の存在でした。
- 千葉県の習志野俘虜収容所などに、食肉加工のプロがいた
- 日本政府は、彼らにソーセージ作りを教えてもらう講習会を開いた
- カール・ヤーン、ヘルマン・ウォルシュケなどの職人が、本場の技術を伝えた
このとき教えられたレシピは、「習志野ソーセージ」として今も受け継がれています。
現在の大手ハム・ソーセージメーカーの技術をさかのぼると、
こうしたドイツ人から学んだ日本人職人たちにつながるケースが多いと言われています。
つまり、日本のウインナーが細かく規格化されている背景には、
もともとドイツの厳しいマイスター制度の考え方が影響している可能性が高いのです。
日本独自の進化 魚肉ソーセージの登場
日本のソーセージ文化で特にユニークなのが「魚肉ソーセージ」です。
戦後の食糧難から生まれたアイデア
第二次世界大戦後、日本は肉が不足していました。
しかし、日本は海に囲まれていて魚は手に入る。
そこで「魚を使ってソーセージのような食品を作ろう」という発想が生まれます。
- 1952年 日本水産が「ツナソーセージ」の生産を開始
- その後、スケソウダラの冷凍すり身技術が発達し、大量生産が可能に
- 安くて保存がきくタンパク源として、一気に広まった
魚肉ソーセージは、ヨーロッパにはほとんどない、日本独自の進化と言えます。
規格と名前の決め方
昔のJASでは、魚肉ソーセージの区分もはっきり決めていました。
・魚肉ソーセージ
魚肉が50パーセントを超えるもの
・混合ソーセージ
魚肉が15パーセント以上50パーセント未満のもの
現在は表示のルールが変わりましたが、
「魚を主な材料にしたソーセージ状の食品」として、すっかり日本の定番商品になっています。
今は健康食品としても注目
魚肉ソーセージは、今では次のような点でも評価されています。
・DHAやEPA、カルシウムなどの栄養がとりやすい
・卵を使わない製品もあり、卵アレルギーの人にも配慮されている
・常温保存できるので、防災用の備蓄にも向いている
・金属クリップを使わない包装など、環境や安全面にも工夫が進んでいる
見た目は「ソーセージ」ですが、中身は日本の水産加工技術と健康志向がつまった、かなりハイテクな食品と言えます。
調理法と食感の違いをくらべてみよう
同じソーセージでも、種類によって「向いている調理法」や「食感」が違います。
・ウインナー(細くて皮が薄い)
軽くゆでる、または表面に焼き色がつく程度に炒めるのが合っている
加熱しすぎると皮が破裂しやすい
特徴は、かんだときに「パリッ」とはじける感じ
・フランクフルト(中くらいの太さ)
皮がやや厚く、噛みごたえがある
強めの火でじっくり焼くバーベキューなどに向いている
中はジューシーで、肉の存在感が強い
・ボロニアソーセージ(かなり太い)
スライスしてサンドイッチやサラダに入れることが多い
軽く焼いて脂を少し溶かすと、香りが立ってさらにおいしい
このように、「名前の違い=食べ方のおすすめ」がセットになっていると考えると覚えやすいです。
まとめ
ソーセージとウインナーの違いをまとめると、次のような意味を持っています。
・ウインナーはソーセージの一種であり、対立する言葉ではない
・日本では、JAS規格によって「腸の種類」と「太さ」で名前がしっかり決められている
・その背景には、ドイツから伝わった本格的な技術や、アメリカ・イタリアの影響、日本独自の工夫が重なっている
・名前を知ることで、「どんな食感か」「どう料理するとおいしいか」がある程度予想できる
身近な食品の名前の違いをたどっていくと、
ヨーロッパの食文化、日本の近代化、戦争や食糧難をきっかけに生まれた工夫など、
たくさんの歴史や技術がつながっていることが見えてきます。
スーパーの売り場でソーセージを選ぶとき、
「これはウインナーだから細くてパリッと」「これはフランクだからバーベキューによさそう」
といったように、名前と太さをヒントにして選んでみると、いつもより少し楽しくなるかもしれません。

